第12回HOSPAC総会の落穂拾い

院内患者会世話人連絡協議会(HOSPAC)の総会が、去る10/27にあった。名前はいかめしいが、ささやかな会合である。今回の目玉は、後藤真美子さんの「白血病患者の病態の実態調査に基ずく看護の視点」とでもいうようなお話しである。造血幹細胞移植の血液腫瘍患者の術後の生活実態調査を、インタビュー手法で行い、患者が病態の変遷を如何に乗り切って行くのか、また家族・社会・就職などの環境へ如何に対処しているのかを、限られた資源から解明し、専門である看護の立場から取るべき支援について提言をされている。出席しているメンバーには、移植患者もおり、ドナーもいて、まさに自己の体験に照らして、真摯な論議のできる場であった。

 

戦中の頃から学問体系として芽生えだした「生態学」がある。

 (参照:手軽に読める書籍ー生態学入門 (講談社学術文庫 78) )

  動植物の生態を、生息している現場に入り込んで精査して、個々の生態を明らかに

  してゆく学問体系であり、著者らの属する京都学派へ批判する一派もあったが、

  環境保全問題で、最近では講座を置く大学が増えてきている。

戦後アメリカから学んだ「マーケッティング(MK)」手法が、コンビニ・スーパーなど身近な生活様式を一変したことは、みんなが熟知している。この生態学やマーケッティングは、共に手法として、事象のある現場に没入して精査することで実態を明らかにし、対処すべき手段を見出してゆくものである。医療分野では、免疫学がその同類と考えられよう。

 

医学分野などとおこがましいことを言う資格は微塵も持ち合わせていないが、血液腫瘍に限定してみると、医学的な研究と成果として得られてきた医療方法の進歩は目覚ましく、その恩恵の一端をを受けてきた一患者としては、貢献された多くの研究者・医療者への感謝の念には限りないものがある。

 

ここで、後藤さんの話へ戻る。日本の医療分野は、生態学やMKのような手法には距離を置いているように見える。移植患者には、術後に多くの試練が待ち受けていて、医療の継続を余儀なくされることも多いのであるが、後遺症・有害事象ゆえに生活上、治療と日常生活の狭間に生じる多様な問題に遭遇する。このような実態に対しての医療者側からの調査や研究は多くはない。後藤さんの研究は、この分野に一歩を踏み込んだものである。(独断ですが)

 

患者にとって、これらの医療者の理解が得られにくい曖昧な心身の状態について、何とかしたいと活動しているのが、患者会である。今回はもっと、後藤さんと話し合いをしてみたかった。お定まりの様な食事を兼ねての懇親会席上では、医療者も患者も一体となっていつも本音の話しが出てくる掛替えのないコミュニケーションの場である。今回もあった、胸に長年秘めてきたある患者の苦悩とその家族の複雑な感情や支援有り様の話は、遠隔地のため欠席された後藤さんにこそ聞いてもらいたかったと思った。

 

また、総会の中では、小さな小さな院内患者会(同じ病院に入院・通院する同病の患者・家族の会)への支援に、医療者側からの支援や協力の増えてきているところもあれば、なかなか医療者に存在価値を認めてもらえずに困っているところ、認可すら拒絶される所などについて、忌憚のない話合いができた。

 

内容を公表する事を予定していない集まりのため、総会議事録は特に残さないつもりである。

                                   (百軒)

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コメント: 1
  • #1

    blackie (月曜日, 05 11月 2012 08:32)


    HosPAC第12回総会、無事に開催できましたことを心より感謝いたします。
    講師、ご参加の皆様、毎回会場をご提供いただく病院スタッフの方々、誠にありがとうございました。
    今後とも宜しくお願い申し上げます。