<前置き>
医師の処方箋なしに手軽に買える医薬品、例えば風邪薬・花粉症薬・鎮痛剤などがあり、結構自己判断で服用している人も多いだろう。栄養ドリンクなど、積極的に服用する向きもある。
また、医療技術の進歩で診療科が細分化されて、同時に複数の診療科を受診する人も少なくない。この時、それぞれの診療科で出される処方薬を服用する事となる。電子カルテ化により同一医療施設内で受診していればまだ医療者間での情報の共有がなされる可能性がある。
でも、病院が異なれば、患者が医療情報を伝達するか、お薬手帳を積極的に見せるかしないと、相互作用のある医薬品が処方されてしまう。処方箋薬局も異なれば、お薬手帳のみが手掛かりとなる。(この辺りの医療関係者のチェック機能は、システムとしてはうまく機能しているとまでは言えない)
他方、疾患治療の為、医師の処方による医薬品を服用する患者の側の問題がある。この時に、患者に与えられる情報は、法律によって制約がある。例えば、医薬品のケースに入れられている添付文書は、手渡してもらえない。専門的な文面ではあるが、薬を服用する患者にとっては、場合によっては生命にかかわる情報が含まれている。ネットでの検索で閲覧できるが、基本的には医療従事者への公開情報なのである。〔一般患者でアクセスしたら、閲覧できない〕
このブログで、揶揄的に投稿した「文旦」の拙稿がある。グリベック(CML・GISTなどへの治療薬)の添付文書、「相互作用」の項に
本剤は主に薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP3A4)で代謝
されるので、本酵素の活性に影響を及ぼす薬剤と併用する場合
には、注意して投与すること
とあり、「併用注意」としてグリベック服用時には摂取しない様に掲示されているものの中に「グレープフルーツジュース」がある。
グレープフルーツジュース
*本剤の血中濃度が上昇することがある。
本剤服用中は飲食を避けること。
*発現機序の詳細は不明であるが、グレープフルーツジュースに
含まれる成分がCYP3A4を阻害することにより、本剤の代謝
を阻害し、血中濃度が上昇することがある。
本剤服用中は飲食をけること。
添付文書のこの箇所には、二点問題がある。
①<グレープフルーツジュース>と表現されているが、果実そのままのグレープ
フルーツについては、記載されていない。生のままならいいのだろうか?
また、グレープフルーツの果汁は、多くのジュース類にも含まれている。その許容限界はあるのだろうか?(基本的にはすべて摂取を禁ずべきであろう)
David Bailey氏が、Canadian Medical Association Journal、CMAJで報告しているのでは、グレープフルーツと指摘していて、ジュースはその摂取物の形態として表現されている。
http://www.afpbb.com/article/life-culture/health/2913502/9910188
②グレープフルーツの含有する成分が、薬物代謝酵素であるチトクローム P450 3A4(CYP3A4)の作用を抑制する事から、多くの医薬品服用時に「グレープフルーツ」摂取が禁じられている。その成分として、フラノクマリン、オキシソラレン、(古くは
フラボノイドのナリンジン)などが指摘されている。では、フラノクマリンを含有する他の柑橘類例えば「文旦」などは、摂取を控えるべきなのだろうか。示唆すらない。
<本論>
記事の紹介(全文転記は出来ないので、URLなり書籍購入で情報を得てほしい)なので、
拙文部分は飛ばして、URL等で見て頂ければ十分でもある。
①日経メディカル2013年4月号「特集 知らないと怖い薬の相互作用」
この特集について、日経メディカルオンラインが転載として、紹介を始めている。
http://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/mem/pub/report/t198/201304/529931.html
<薬を併用すると、思わぬ作用の増強が起きる場合がある。以前から指摘されてきた相互作用に加え、新薬が広く使われている領域では、これまで多くの医師が経験していない、新たな組み合わせによる有害事象も発生している。今知っておくべき薬の相互作用をまとめた。>
医療者への警鐘記事であるが、多剤併用や重複処方の弊害を受けるのは、患者であり、
一読の価値がある。
また、
<多剤併用の問題を討議し、書籍にまとめたのが『提言―日本のポリファーマシー』(尾島医学教育研究所、2012年)だ。多剤併用で、抗菌薬との相互作用によるワルファリンの作用増強、薬の副作用による偽膜性腸炎やミオクローヌスなどが次々に起こった例など、数多くの有害事象例が紹介されている。>
として、書籍が紹介されている。
②医療情報共有ネット、各地で始動ー病院の患者カルテや画像共有
のタイトルでCBnews が
<患者の医療情報を共有する意義について、「医師が偏在したり、専門医が足りなかったりする地域では、医療ネットワークを通じた診察は有用。専門医とかかりつけ医が機能分担を行うことで、患者に対して適切な診察が行える。全県下の医療機関をネットワークでつなぐことで、より多くの患者がメリットを受けられる。高齢者は複数の医療機関で診察を受けるケースが多いが、情報を共有することで診察や検査の重複を防ぎ、医療費の適正化にもつながる」> として、その動きを報じている。
http://news.cabrain.net/article/newsId/39647.html
医療情報の共有化がもたらすメリットには、
1)診察・検査・投薬などの医療行為の無駄な重複を防ぐことによる医療費の節減。
2)診察時に、患者の全医療処置経緯の情報に基ずく適切な診断・治療行為が可能。
3)投薬などの重複・相互作用薬の忌避への、医師や薬剤師によるチェック機能確保。
4)患者視点からは、どの医師に掛かっても適切治療を受けあるいは専門医への適切な
紹介が受けやすくなる。医療施設の過疎地域でも受診の道ができる。服用医薬の適切なチェックを、重複した医療者の眼で行われるようになり、安心して服用できる。
紹介されている事例も、道遥かであろうが、期待したい。
PS
政府インターネットテレビに下記のようなのがあった。
とても分かり易い動画である。どれほどの人が見ているのであろうか。
調剤薬局の待合などで流すのが有効と思う。
<知っておきたい薬の正しい使い方~安全・安心な健康管理のために>
http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg7770.html
(文責;三鍋康彦)
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