ビハーラとの出会い

血液腫瘍のプチ患者会を尋ねるネットの旅路は、旭川から始めて久留米まで来た。

久留米大学病院小児科を拠点とする患者会として、

  木曜会(小児がん支援団体)

  SmileDays(小児がん経験者の会)

  星まつり(小児がん患者の遺族・家族の会)

があり、医療者の支援もある。

 

これらに関わる医療者の一人が招聘された宗教団体のビハーラ活動全国集会の報告記録に出逢った。長文ではあるが、ここに引用しておく。

  

   第12回ビハーラ活動全国集会 報告書

       「いのちによりそう」 -地域に根ざしたビハーラ活動-

 

<引用>

「院内ボランティアとビハーラ」
発題者 稲田浩子さん 久留米大学医学部小児科小児血液腫瘍グループチーフ

稲田浩子先生によりますお話をもとに、初めは、先生のスライドを中心に、特に久留米大学医学部小児科病棟の実例をもとにしたわかり易いお話でした。その後は、パネラーの方4人に来ていただきまして、話し合いをしました。
第1部では、まず稲田先生から小児ガンの特徴をお話されまして、小児ガンの中の約4割近くが白血症だということでした。ただ、現在3人に2人は完治するという状況であるそうです。ただし、また新たな問題・残った問題もたくさんあるということでした。
そのためにはトータルケア・・・身体だけでなく精神的な心理的なもの、経済的・社会的な本人に対する問題をケアしていかなければならない。そのためには、医者だけではなくボランティアを始め色々なたくさんの人からの支えで、チーム医療をするということでありました。その他にも病院のシステム・院内の保育や学級・院内の学校というようなことも進んできたということであります。他に病名の告知とかいう問題も出てきました。
あと、そういうケアに対して、ボランティアの活動・・・これが非常に力になるというような話でありました。
また、治られてからの問題もあるということです。治療が終わった後にも、再発の問題。それから既往症ということで、いままでそういう病気をしてきたということが、進学とか就職に障害がある。あと結婚。そういうことに対しても、小児ガンを体験した人の会、「スマイル・デイズ」という名前ですが、その会でもって、いろんなボランティアの方に支えていただき、その中で克服していくことでありました。病気もそういう既往症ではありますけど、病気も排除するものではなく、自分の一部なのであると認めていく・乗り越えていくということが出来るという実例をお話いただきました。
今までは治る話でしたが、今度は残念ながら治らない方たちのケアであります。子供たちのターミナルケア。これも大人と違った問題点がとても大きいということであります。先ほどお話しましたグリーフ・ケアの問題ですが、やはり子供の死の特殊性・・・これは両親や家族の方の精神的苦悩が非常に大きい。それから治療にあたったスタッフの方の悲しみも非常に大きい。そういう面がある。そこで久留米大学医学部小児科病棟では、そういう患者さんの家族の会を「木曜会」という名前で発足をされたそうです。その会で平成6年度からだったと思いますが、星まつりという追悼法要をされておられます。ビハーラ佐賀も最初から立ち会っておりますが、その中で、同じ子供を亡くした悲しみを持ったもの同士が、話をしていく、同じ悲しみをわかってもらえる人たちと一緒に乗り越えていく集い、ということで非常にありがたいということでありました。
後のパネルですが、その中で意見として、「木曜会」とのご縁をお話いただきました。その中でも、悲しみを共有する仲間というのが、非常にありがたい。それから、お互いにわかり合える世界がある。その中で生きる勇気を得ていくということでありました。
稲田先生も、始めは参加のご案内も躊躇するところがあったが、だんだん参加者も増えて、年々繰り返し参加される方は、だんだんと表情が明るくなってこられる。
医師の方々も癒される機会であるとおっしゃっておられました。他の意見としては、こういう星まつりという追悼法要があるということは、とてもうらやましい素晴らしい集いである。病院のほうから、亡くなった遺族への案内とか、医療側からの働きかけはほとんど無いというか、タブー視されることもある。遺族から病院への働きかけも出来ない・・・ありえない。そういうことなので、こういう機会はありがたいということでありました。
亡くなった子供さんの兄弟の疎外感。親御さんたちが、亡くなった子供にかかりっきりでありますから、その他の兄弟たちは、非常に疎外感を持つというか、そのあたりの問題がある。その兄弟と同じく、お父さんにも疎外感がある。ただ、本当は父親にも悲しみがあるんです。「木曜会」としても、お父さんの参加をもっと増やしたい、お父さんの悲しみをわかる機会が欲しいということでありました。
最後に、ある意見ですが、この星まつりはビハーラ活動の人たちが、もしもいなかったならば、今まで11回も存続していただろうか?という質問に対して、木曜会の方たちからは、やはりこういう仏教・宗教とのかかわりがあったからこそ、いままで存続することが出来たという意見がありました。稲田先生からも、お医者さんが「永遠の命」とか言ってもあまりピンとこないので、宗教者の方から言ってもらったほうが、ピンとくるようなこともありました。というお言葉を頂きました。

佐賀教区担当

<引用完>

 

                             (文責:三鍋康彦)