グリベックとジェネリックの問題・・・新薬価基準

 

とある市民公開医療講座のQ&Aで、グリベックの後発品の話題が出た。

 

「グリベック」は、分子標的治療薬としてCMLGIST疾患へ驚異的な治療効果を発揮してきた代表的な医薬品である。この薬に対して、現在後発品4種類の後発品が薬価基準に収載されている。

   グリベック錠100mg       ノバルティスファーマー     ¥2617.40

   イマチニブ錠100mgNK」 日本化薬            ¥1540.30 

        イマチニブ錠100mgEE」 エルメッドエーザイ                 ¥1540.30

   イマチニブ錠100mgKN」 小林化工                              ¥1540.30

   イマチニブ錠100mg「ヤクルト 高田製薬                                ¥1540.30

現在、適応症例は「フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病」に限定されている。

 

しかし、何れは、CMLGISTへも適応されることであろう 

 

医療費の抑制施策として、行政は先発医薬品のジェネリック品への転換推進への施策を大きく打ち出している。薬価が下がることは患者の直接的な経済負担が減るので、歓迎される向きも多い事であろう。 

 

しかし、抗がん剤服用時の治療効果と副作用での経験を経た患者の視点からは、複雑なものがある。

① 一患者として、後発品への切り替えをどう判断するかは、微妙な問題である。

 副作用の情報なしに切り替えるには、逡巡があろう。治療効果の向上が全く謳われていないジェネリックで治療上のメリットは皆無なので、なおさらである。また、治療効果の向上を期待するなら、第二世代のTKIへの選択もある。医師にとっても、処方を決めるのに厄介な問題かもしれない。

 医療費削減の観点からは、総論賛成すべきであるが、高額療養費制度を活用していると

 患者本人の負担額は変わらない現状がある。この基準薬価では、CML患者の大部分が服用している13錠以上(標準4錠)では、高額医療費適用となり、個人負担額が変わらない。後ろめたい気持ちは残るが、薬の切り替えの不安が優先する。

③ 他方、ジェネリック推進を目指す医療報酬改定の諸制度がある。 医師は、処方箋で

 医薬品一般名で記載することが基準となっていて、加点がある。

 先発薬名で処方する場合には、個々に掲載欄へ署名しなければならない。〔加点無〕

 薬局では、薬剤師は医薬品一般名の処方に対して調剤をすれば加点が付く。もしも、

 先発薬を処方した場合は、処方調剤の記録にその理由を記載する義務がある。たとえ

 患者の要望で行った調剤でも記載義務がある。さらに、ジェネリックの調剤率が全体

 として低下すると、調剤報酬が低下する仕組みが組み込まれている。

 これらは、患者の立場とは背反事象となり、もしかしたら、医療者の立場と経営者の立場の板挟みとなる可能性がある。

 

 立場や信念によって、多くの異論もあろう。コメント頂ければ嬉しいことである。

                        (文責:百軒)

 

コメントをお書きください

コメント: 5
  • #1

    安藤美智恵 (金曜日, 09 1月 2015 23:36)

    慢性骨髄性白血病になって10年以上になります。グリベック購入のために働いています。家族にも迷惑をかけています。この薬を死ぬまで飲まなければいけないのが辛いです。私は倒れるまで働かなければいけないのでしょうか・私がいなくなれば、と思うこともよくあります。

  • #2

    三鍋康彦 (月曜日, 12 1月 2015 08:27)

    安藤さま、同じように10年以上の歳月グリベック服用しております。
    高額療養制度で大きく救われているとはいえ、生涯続く薬代は大きな負担です。
    このブログの最新投稿(2015/1/9)に、昨年末に適応になりましたCML患者へのグリベックのジェネリックス製品の価格の一覧を掲載しましたので、ご参照ください。ほぼ半額の製品がCML患者にも適応になりました。ただし、高額療養制度を活用されておられると思いますので、実際の自己負担額は、各患者によって異なりますので、ご試算ください。
    ご存じの事と思いますが、CML治療新薬グリベック非公式サイト(http://www.geocities.co.jp/Beautycare/4196/)のブログ欄には、グリベック断薬や副作用のコメントが幾多も出ております。これは、医学的な見地からの目で読むことが肝要ですが、主治医とご相談される一つの治療法選択でもありましょう。
    闘病生活で生き抜かれるために、グリベックのジェネリックスの選択肢が出来ましたので、主治医や病院のMSW(メディカルソーシャルワーカー)とご相談されて、少しでも良き道を探されますようお祈り申し上げます。

  • #3

    はる (日曜日, 20 11月 2016 16:03)

    主人がグリベック歴8年です。家計の医療費負担が苦しいです。子育てしながら医療費も、共働きでなんとかやってる状況です。グリベック費用も新薬も安くなってほしい

  • #4

    さら (木曜日, 17 10月 2019 15:59)

    CMLを患って10年になります。高額療養費の限度額の区分を抑えるために仕事をセーブしていますが、そうする当然所得が少なくなるので負担が大きいです。今はギリギリ贅沢さえしなければ生活していけますが、今後年金生活になった時にどうなるか心配です。

  • #5

    三鍋康彦 (金曜日, 18 10月 2019 09:29)

    「はる」さま、「さら」さまへ:
    いずれの病気であっても、取り分け慢性疾患での昨今の医療事情から患者や家族は、経済的な事情を抱えて難渋しています。
    慢性骨髄性白血病(CML)の治療薬と経済性の問題は、このブログ以降に色々と変化してきておりますが、本質的な経済負担の重さには変わりはないように感じております。


    この課題についての其の後の関連するブログなどを挙げておきますので、ご参考になればと思います。

    ❶2018/12/5【グリベック・高額医療品のジェネリック選択の問題―大原薬品工業の一石】
    ❷2018/8/2【高額療養費上限額の変更】
    ❸2019/10/3【慢性骨髄性白血病患者アンケート調査報告】
    ❹2019/5/18【慢性骨髄性白血病(CML)の副作用雑感】➡個人的なもの
    ❺2019/5/6【たかがお薬、されどお薬・・・ポリファーマシー】➡個人的なもの
     
    ①血液学会
     【モーニングセミナーMS3-3:慢性骨髄性白血病治療の進歩―TFRのエビデンスと実践】
     ➡これは、まだ治験段階であるTKI(グリベックなど)の休薬の現状を知るのにいい
      セミナーであったが、聴講する機会がなかった。

    グリベック(スプリセル・タシグナ・ボシュリフ)などの服用されておられるCML患者や家族の皆さま方の現状が、❸に挙げましたいずみの会によるアンケート調査報告に詳しく出ています。例えば治療費の大半を占める薬代の視点から見ますと
     ①グリベック服用量:400mg(52%),300mg(22%),200mg(15%)
      ➡高額療養制度でいずれでも個人の負担は変わらない場合が多い。
     ②通院(=処方箋発行):12週間(47%)8~9週間(19%)4~5週間(16%)
      ➡高額療養費制度の認可が、地方自治体で異なり3ケ月まとめの処方と1ケ月処方では
       年間での自己負担額が大きく変わります。
       *個人的ですが、総合病院では3ケ月処方が通じていたのですが、クリニックへ
        移ってからは2ケ月処方した認められず(同じ自治体です)自己負担が増えました。

    など、色々とご自分の置かれている医療環境とこのアンケート調査による他者の環境とを比べてみて、より経済負担の低減を図る努力をして頂ければと思います。