【造血幹細胞移植とワクチン接種】原三信病院横田看護師さんの講演より

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

山内  千晶 さまより戴きました、標記講演内容を主体とした

メッセージです。造血幹細胞移植患者にとりましては、

非常に重要な問題であり、不安に思われたり迷われるようなときの

ご参考になるものと思い、ご承諾を得て転記いたしました。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

                           (百軒)

21日に九州大学病院で行われた血液内科チームによる
医療講演会について、とてもいいお話を聞けたので
ここでお伝えしたいと思います。
血液疾患に関わる人以外には「???」の内容かと
思いますので、その際はご遠慮なくスルーされてくださいw
以下は原三信病院の看護師、横田さんの講演内容を
判りやすく私がまとめたものです。補足も入れております。
そのままの文体ではありませんので、ご了承ください。

【造血幹細胞移植とワクチン接種】

風疹、麻疹、水ぼうそう、おたふく風邪などは
一度罹るか予防接種をすれば、一定期間抗体ができ
再び病気になる確率がかなり低くなります。
罹ったとしても、重症化せず軽度で治癒します。
このため、小さい子どもさんや妊娠の可能性のある方
妊婦のいる家庭などには予防接種が推奨されています。
また毎年インフルエンザの予防接種はいずれの方も
受けるように、と言われてますよね。

しかし移植患者はこの免疫機能がぶっこわれているので
改めて他人から「幹細胞」という血液の種を移植してもらい
病気を治療します。そのため、免疫機能がリセットされます。
判りやすく言えば、過去にどんな予防接種、病気になっても
「赤ちゃんの状態に戻る」ということなんです。

上記のような病気は子どもの時にかかると比較的軽度で
治癒できますが、大人だと重症化する確率が高かったり
後遺症などがひどく出ます。特に免疫機能が弱っている
移植患者にとっては、この手の病気はやっかいです。
だからと言って、これらを全部受け直すとなると、
全部自費になります。
また予防接種を受けることで、もともとの免疫が低い患者は
抗体そのものがついてくれるかどうかもわからず
逆にワクチンによっては、病気そのものを発病する可能性も
少なからずある、ということで、移植患者の予防接種は
そこまで重要視されていませんでした。

しかし移植治療によって長期生存が可能になり
社会生活を送る中で、これらの病気に罹患してしまう
危険性が高い状況が表に出るようになりました。
具体的にいえば、移植後に子どもさんが生まれた場合、
お孫さんが生まれて、同居もしくは預かったりする場合、
それ以外でも保育士、医療現場への復職をする患者、
不特定多数の人と接するサービス業の患者などです。

今まで予防接種に関してはインフルエンザのような
「不活化ワクチン」は推奨されていました。
「不活化ワクチン」とは要するに「化学処理で死んだ
細菌やウィルス」を使ったもの。
それ自体の毒性はないので、副作用は別として
予防接種により予防する予定の病気を発病する、
という危険性はありません。
他にも狂犬病や日本脳炎、肺炎球菌ワクチンなど。
(インフルエンザは現在、ガイドラインとして
 2回接種(一カ月空けて)が推奨されています。)

しかーし、先程の麻疹や風疹などは「生ワクチン」
つまり「毒性をちょこっと弱くしたワクチン」なのです。
最近「ポリオ」の予防接種で話題にもなりました。
「生ワクチン」は弱毒性ではあっても「死ワクチン」では
ないので、不活化ワクチンに比べると、副反応が起きやすい
デメリットがあります。(その分免疫期間は長く強い)

今までこの生ワクチンは移植患者には使えませんでした。
私も復職の際にBCG(結核ワクチン)が打てないというのが
障壁となりました。

しかしこのたび原三信病院で、一定のガイドラインを
作成した上で、かつ「罹患の可能性が高い環境にある患者」
を対象とした生ワクチン接種が行われるようになりました。

ガイドラインとしては移植後2年、免疫が再構築されており
GVHDがない、免疫抑制剤を終了して1年以上、他疾患による
リスクがない場合が対象となっています。
本来は院内接種不可だったのですが、原三信病院は移植患者
に限り、院内での接種ができるようにしています。

実施ワクチンは移植後、小さな子供さんのいるお母さん。
MRワクチン(麻疹・風疹)を接種されました。
接種中は必ず「ワクチン日記」をつけてもらい、体調の変化を
管理します。接種後、看護師から自宅に電話で経過を確認。
(このお母さんは翌日37度の発熱のみ)
その後、一カ月空けてまた別のワクチンを打たれたそうです。

現在、自分がどの抗体を持っているかを検査することは
保険適応になっています。(九大病院も保険適応です。
ただし混合診療が認められていないため、ワクチン接種は
クリニックへの依頼のみ。)
しかしワクチン接種はどこも今は自費です。
対象は風疹、麻疹、水ぼうそう、おたふく風邪のみで
破傷風やジフテリア、百日咳などはまだ対象外です。

こういう話が出てくるというのは、それだけ移植患者が
長期生存できるようになり、社会復帰できる世の中に
なってきた!という証拠ですね。

血液内科は今、長期生存することを前提として
さまざまな治療以外のサポートに力を入れ始めています。
別項で述べる妊孕問題もそうです。

私はもうおばちゃんですが、若い患者さんたちにとって
この予防接種の話も、ひょっとしたら私のように職業差別に
繋がらずに済むかもしれません。

移植患者も普通の生活ができる世の中。
そのためには何が問題でどうすべきか。
またどのようにしていけば、実現可能かを
医患一体で考えるべきではないでしょうか?

今回のお話は聴衆が少なかったので、
半年後にまた開催する医療講演会でもう一度
議題にしてもらえるようにお願いしています。
興味のある方、もっとしっかり聞きたい方は
半年後に期待されてくださいwww