ヒポクラテスの木・・・・鈴懸

酷暑に時期には緑陰がいい。寄り添う老樹に、時折含蓄のある風貌を見ることがある。日本へ最初に渡来した「鈴懸の木」の木霊とでも言おうか、「慈悲の黙想」の相である。小石川植物園で見ることが出来る。街路樹の代表格は、プラタナスと呼ばれているモミジ葉鈴懸の木である。鈴懸の木には、「鈴懸」「アメリカ鈴懸」とその交配種の「モミジ葉鈴懸」がある。
太平洋戦争の最中に愛唱された「鈴懸の経」をご存知の方も多いだろう。立教大学の構内にはそのモデルとされる鈴懸の木がある。また、数多くの病院で、「ヒポクラテスの木」と称する鈴懸の木が植えられているそうだ(由来を知らなかった)。ヒポクラテスの故郷のギリシャのコカ島にある鈴懸の木の子孫である。赤十字社100周年記念として広められたり、師弟の教えとして苗木を伝授されたりして、幾つかの植樹のルートがあるようである。著名な医療機関の多くに植樹されたとある。今の学生や医療者に、其の「ヒポクラテスの木」を知っておられる方がどれほどおられるのだろうか。中には植物検疫に違反する形で持ち込まれたものある。医療者にとって神とも仰ぐヒポクラテスの名にそぐわないのが惜しまれる。

                                     (百軒)