外来受診でふとしたことに、医療者の新たな支援の息吹を感じた日。

10年来の疾患の月一回の定期外来受診の日のこと、診療室ドアー脇に「インフォームドコンセント・サポート・ライブラリー」が置かれていた。7年ほど前、学会で見かけて製薬メーカーに入手を依頼したが、医療者以外には渡せないとにべもなく拒絶されたものである。多くの患者向け資料が増えた今の目で見ても、患者が直接見てとても平易で参考になる資料で、当時としてはすぐれものであった。以前からがん情報サービスがだされている一般向け情報資料が置かれていたが、こんなのも患者の目に触れやすい所に置かれるようになったのかと、病院側の動きを感じた。

 

診察中に、主治医が「インフルエンザワクチン」の接種をしましたかと問われた。未だだと答えると、この月半ばまでには接種するようにとアドバイスされた。例年10月に接種して主治医にその旨報告するのにその話がなかったからだろうか。主力メーカーの不正事件に巻き込まれてワクチン不足の風評の立ったりしたことはあったが、まだ数年前の大流行の様な兆しは出ていない。でも、免疫機能の悪い小生への適切な助言と受け取りたい。


この病院には、緩和ケア―委員会が主催するがん患者対象のサロン「オレンジの会」がある。その世話役をされている看護師さんに通路ですれ違ったとき、「今月も開催するので参加してくださいね」と声を掛られた。生憎外来受診と時間まで重なっていると答えると、診療科の受付に声を掛けて、参加しやすい様にしておきますからと言われた。

 

労災病院の名の示すように、この病院の旗印は「治療就労両立センター」であり、多くの施策が行われている。だが、神奈川県にある国指定の17箇所の「がん診療連携拠点病院」には入っていない。しかし、4年前に神奈川県指定の8箇所の「神奈川県がん診療連携指定病院」の一つとなり、幾つかの患者サイド寄りの施策を試行錯誤してきたようである。その姿が、一般患者にも見えてきたと言えるのではないだろうか。


がん診療に限らず、病院の責務の重点は、診療技術の充実や院内の環境の整備にあるが、患者の闘病・生活などへの支援が望まれる時代となってきており、患者支援のサロンなどはその一つである。国指定のがん診療連携拠点病院422の86%には「がん患者サロン」が設置されている。しかし、都道府県指定のがん診療病院263の殆どには、「がん患者サロン」は見られない。その意味で、外来通院しているこの病院で、患者支援への努力をしている医療関係者へエールを送りたい。

                                                         (百軒)