お天気も良くて、ほっとサロンいだ(井田病院内)でのがんサロンに参加してみた。サロンの冒頭でいつもある西医師の15分ばかりのミニレクチャーのテーマは、「在宅ケアと看取り」であった。
マスメディアなどでも話題としている死場所は、自ら選択はできないだろうが、80%の人が病院で死亡しているという現今の背景から見て、何となく病院かなとは思える。(60年ほど前ではほとんどの人が自宅で亡くなっていたのは、実感していた)
(死に場所の変化) 2010年 1951年 (単位%)
病院 77.9 9.1
診療所 2.4 2.6
保健施設 1.3 -
老人ホーム 3.5 -
自宅 12.6 82.5
* 人口動態統計年報主要統計表(2011年)より
http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/suii10/dl/s03.pdf
一方では、在宅医療・在宅介護と人生の終末期に当たる時期を自宅で過ごすように旗が振られている。医療費抑制策が至上命題であり、また人生の最後を自宅で迎えたいとの希望が多いとプロパガンダされている。でも、終末期自宅希望の数字は、厚生白書からマスメディアの数字まで並べると、10~90%とあり流動的である。
この病院は、中規模のがん診療連携拠点病院であるが、外来治療・入院治療のほかに、緩和病棟があり、病状により利用することができる。ここまでは、かなりの拠点病院と変わりはない。しかし、他に総合ケアセンターがあり、主治医の往診を組み込んだ在宅医療支援のシステムを運行させている。末期がん患者にとっては、この病院の中での多くの選択肢が可能なのが魅力的である。がん研の「がん情報サービス」などで調べてみても、拠点病院などでの主治医の往診をしているところがなかなか見つからないので、珍しいケースではないだろうか。
厚労省の委託研究である「終末期医療に関する調査結果(資料):2010年」には、 http://www.mhlw.go.jp/shingi/2008/10/dl/s1027-12e.pdf
余命6ケ月の患者を想定した場合の最後の療養生活場所の希望が掲載されている。
【療養生活場所】 【生活がこなせる病期】 【生活が困難な病期】
緩和ケア病棟 18% 47%
自宅 63% 11%
病院 12% 32%
さらに最近の調査では、病種による区分での調査がなされている。
「終末期医療に関する意識調査等検討会報告書:2014年」
http://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10801000-Iseikyoku- Soumuka/0000041846_3.pdf
ここでは、疾患の違いによる終末期医療生活場所の希望が掲載している。
がんについてみると、
① 末期がんではあるが食事はよくとれ、痛みもなく、意識や判断力は健康時と同様
② 末期がんで、食事や呼吸が不自由であるが、痛みはなく、意識や判断力は健康時と同様
【療養生活場所】 【末期がん:①病状安定期】 【末期がん:②病状増悪期】
医療機関 19.0% 47.3%
介護施設 8.2% 13.7%
居宅 71.7% 37.4%
このように、慢性疾患の終末期での医療場所の希望は、病状によって移り変わるのである。
患者夫々の背景が異なるのでその選択は一律ではないが、医療施設としての病院の多くが急性期対応で緩和ケア病棟がなかったり、あってもタイミングよく入れる保証はない。特老ホームなどでの居宅医療の可能なところも入居は至難か高額である。自宅医療も家族の支援の有無や介護ケアに問題がある。患者の気持ちが移ろう中で、どのような医療支援を選択できるか、いざとなるとむつかしい問題といえよう。
このような背景で見ると、井田病院の実施している総合ケアセンターの方式は、魅力的である。(個人的には、かろうじて往診可能範囲に入るが、川崎市と横浜市の行政の壁がないとは言えないのが懸念される)
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