緩和ケアの壁にぶつかったら読む本(西智弘著)

多くの人がお世話になりながら、「病院」を描く像は人さまざまである。ましてや、言葉の使い方が紆余曲折の経緯を持つ「緩和ケア」では、実態がわかりにくい。

 

西智弘医師が書かれた上掲の著作は、「緩和ケアを学び始めたばかりの医師、看護師、学生や数年間実践している中堅クラスの医療者向け」に、書かれたものという。

 

この頃は、治療のはじめから緩和ケアが必要と叫ばれ、政策的にも、がん診療連携拠点病院には、緩和ケアチームの設置が要件となっている。でも、その姿が見えにくい。他方では、がん患者らの交流の場では、緩和病棟が話題になることも多い。そのような日常から、ふとこの本を手にしてみた。医療者向けと著者が言われているが、語り掛けているような文体であり、片目をつぶれば医学用語もほとんど気にならない、非医療者にも分かりやすい内容である。西医師を通して、「緩和ケア」の現場の姿が、患者の視点で見えてくるように思われる。

 

人生の終末に患者としてお世話になるものとして、「読む本」でもあろう。    (百軒)