がんの統計の雑感

 

国立がん研究センターが公開しているがんの統計は、膨大な資料が含まれている。その中で注目を惹くようなテーマは、マスメディアがこぞって取り上げる。先日7/22発表の5年生存率などのその一例である。他にも、国立がん研究センターの発表によると、今年のがん罹患者総数が100万人を超え、そのうちで、男性の各部位のがん中前立腺がんが92,600人で第一位に躍り出て、女性の乳がんの90,000人をも上回ると予測している。

 

がん対策基本法施行以来、がんにかかわる情報がいろいろと行政機関から発表されるようになってきた。そして、『二人に一人ががんになる』『三人に一人ががんで死ぬ』といったスローガンのような表現が、あちらこちらで見聞きされる。八十路の仲間との集いでは、この数字はまさに実態として感じられる。また、かかわってきたがん患者会などでは、みんなががん患者であり多くの仲間の亡くなるのを体験している。でも、一歩普通の社会の集まりに入ってみると、この数字のような実態は見えてはこない。『二人に一人』『三人に一人』と簡潔な数字が独り歩きしている嫌いがある。

 

がん患者が『2人に1人』と言われるのは生涯累積罹患リスクと言われるもので、全ての人で死ぬまでにがんに罹る確率と定義されている。男性では62%女性では46%である。多くのがんの種類では患者数が年齢とともに急増するので、高齢者の集団に入ると2人に1人が実感されようが、世の中の半分ががん患者では決しないのである。

 

同じカテゴリーに入る統計として生涯累積死亡リスクがある。がんという病因で死亡する確率である。男性では25%女性では16%である。これは、5人に1人ががんで亡くなることを意味している。(3人に1人ががんで死ぬという表現は正しくはないといえる)

 

これから見ると、がんに罹患してしまった患者が、がんで死ぬ確率は、

 

   男性は:25/62=40%

 

   女性は:16/46=35%

 

と大雑把には言えそうで、がんになると40%ほどの人は、がんが原因で死亡すると思わねばならない。見方を変えれば、半分以上はがんでは死なないので、しっかりと治療に専念すべきで、必ずしも死の病とは言えないのである。

 

3人に1人ががんで死ぬ』根拠は、年々の死亡統計から出ている数字で、年間の死亡者中がんで死ぬ割合を意味している。『死亡した人の3人に1人はがんが原因である』と表現すべきもので、生涯がん死亡リスクが意味する各人ががんで死ぬ確率と混同してはならないものである。

 

それに対して、年々がんに罹患してがん患者集団の数を増やしているのが、年間のがん罹患者数である。血液腫瘍の罹患者数をまとめてみたのが次表である。

 

先日公表された各種がんについての5年生存率の変遷のうち、血液腫瘍の事例をグラフ化してみた。国立がん研究センターが公開している統計では、条件選択でグラフ化できるようになっているので、そのグラフも上げておいた。白血病といっても、その内容は多様であり、それぞれについての5年生存率などは、現状では医療者などの専門家や文献に頼るほかはない。

 

2016年度から、本格的ながん登録システムが動き出すので、数年後にはより正確でより細分化された病種についての情報が期待されるだろう。                     (百軒)