ジェネリックー総論賛成なれど思うことあり(抗がん剤)

 

医療技術の進歩は多方面に亘が、医薬品の日進月歩の貢献も大きく、等しくその恩恵に浴している。だがその反面として国民医療費膨張の一翼となっているため、調剤医療費抑制の手段として、厚労省はジェネリック医薬品の普及率を80%に挙げるべく目標設定をしている。先発医薬品からジェネリック品への切り替えにより、国民医療費の抑制のみならず、診療報酬点数上のインセンティブが設定られていて、病院も調剤薬局も経営上のメリットが出てくる。また、創薬への投資リスクを負わないジェネリック・ビジネスへ注力してくる製薬企業にもメリットである。健康保険制度にあっても患者も薬代が安くなると言われる。総論賛成である。

 

最近、東京大学から「抗がん剤のジェネリック医薬品の安全性に関する初の国際共同研究成果」と題するリリースがあった。そこには、<日米欧においては、抗がん剤のジェネリック医薬品の安全性に懸念は認められなかった>とある。Lancet Oncology誌に掲載済みとあるので信頼性は高いものだろう。でも、ふと思ったのは、「安全性とは何を指すのか」と「山ほどあるジェネリックのすべてに適合することだろうか」ということである。 

 

高邁な論議はともかくとして、上記東大のリリース中に挙げられていた抗がん剤に「イマチニブ」があったので、その恩恵に浴して来た一がん患者として日頃遭遇していることを挙げてみた。

 

    医師はまちまちであるが、調剤薬局では必ずジェネリックを勧められる。 

    「イマチニブ」には、先発のグリベックに対するジェネリックのメーカーは17社ある。 

薬効は厚労省の承認を得ているので同等と見做しても、患者としての関心事の一つに副作用がある。添付文書には、『本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していない』と書かれていて、先発薬の副作用記載の定性部分と思われる事項のみを記載している。ジェネリック間の比較検討の材料にはならないのみか、先発品と同程度の副作用にとどまる保証がない。
調剤薬局では、同じですよと説明されるが、根拠がない。 

    「イマチニブ」は高価な医薬品なので、どこの調剤薬局にも置かれているとはいえない。 

なまじ近くの調剤薬局などに頼むと、不良在庫を抱えさせる恐れがあるので頼みがたい。 

血液内科のある病院の門前薬局では、ほぼ入手できる(時折在庫不足に出会うが・・・)ので、特定の調剤薬局の門を叩くことになる。多くが大手チェーン薬局である。でも、17社あるジェネリックの選択権がない。特定の医薬品メーカーのものしか置かれていないのである。 

    「イマチニブ」のような高価な抗がん剤を継続服用する患者にとっては、「高額療養費」制度とのからみで、患者の自己負担額が安くなるとは限らないのである。ジェネリックを勧めながら、この点を説明してくれた調剤薬局はなかった。「イマチニブ」の場合には、条件次第で患者の自己負担額が増えるのである。(患者仲間ではよく知られているのに) 

この点に関しては、国立がん研究センター中央病院が公開している『高額療養費制度の対象となる高額な抗がん剤のジェネリック医薬品への切り替えについて』が非常に便利な計算用のエクセル表を提供してくれている。 

    ビジネスの観点から勝手なことを言えば、需要量の多くない「イマチニブ」のような医薬品に多数の製薬メーカがジェネリックビジネスとして参画するのは疑問である。薬価を自由価格にしてより安価な医薬品提供を促すか、保険制度上の薬価設定を厚労省が固執するのであれば、ジェネリック申請時に入札制度で安価なメーカーのものを採用する方法を取ればいいのではないかとすら思う。 新見正則氏の卓見がある。

参照文献 

抗がん剤のジェネリック医薬品の安全性に関する初の国際共同研究成果(東京大学) 

   

ジェネリック80%、僕は大賛成 

(イグ・ノーベル・ドクター新見正則の日常・・・yomiDr.

 

高額療養費制度の対象となる高額な抗がん剤のジェネリック医薬品への切りえについて 

 (国立がん研究センター中央病院 公開資料) 

  

「イマチニブ」の販売メーカと薬価一覧 

    

「イマチニブ」添付文書検索一覧表