高額療養費制度での高価な医薬品のジェネリック品の効果

抗がん剤など高価な医薬品の多くなる中で、総医療費抑制政策の一環として、ジェネリック医薬品の推進が図られている。厚労省は80%を目標に掲げていて、ジェネリックを推進する病院や調剤薬局に対して報酬制度でのインセンティブが与えられている。また、患者の自己負担も原則的には減少するのである。

【抗がん剤NAVI】に、左のような記事が掲載されている。高価な抗がん剤の事例として『イマチニブ』を取り上げて、先発医薬品とジェネリック医薬品での患者の自己負担を解説している。

多くのケースでジェネリックの方が患者の自己負担は少なくなるが、高額療養費制度との関係で、ジェネリックに切り替えると患者負担の増えるケースのあることを指摘している。

 

この記事の中で公開されている「高額療養費負担額計算ツール(エクセルファイル)」は、設定を変えれば、いろいろと活用できる便利なツールである。

 

高額療養費制度下での高額な医薬品を長期にわたって服用する患者の立場からみると、ジェネリックへの切り替えにとどまらず、幾つかの問題点がある。若干の仮定条件を入れて試算した事例を挙げておこう。

①処方日数の問題

 

CMLなど病状ば安定していて尚且つ長期に薬を服用せざるを得ない疾患では、処方箋の日数が30日、60日、90日で患者の自己負担額(年間)が図のように大きく変わる。ジェネリックヘの切り替えは、患者にはとって殆どインセンティブにはならない。
(長期処方箋問題に関しては、NPO血液情報広場つばさ などの啓蒙活動で3ケ月処方が普及してきている)

②医薬品の服用量の問題(&価格水準の問題)

 

イマチニブの標準服用数量は4錠/日であるが、病状や体調により減量することがある。

2,3,4錠の各ケースで、30,60,90日処方箋を試算した事例である。

薬を減量することで、かえって患者の自己負担が増えたり、ジェネリックに切り替えると負担が増える場合が出てくる。

 

この点は、薬の服用数量と同時に、医薬品の価格の問題でもある。先発薬やジェネリック薬の価格設定如何によって、類似の現象が発生することになる。

 

 

 

③高額療養費制度での所得階層による問題

 

所得階層により高額療養費の設定額が異なることにより、ジェネリックに切り替えると自己負担が増える階層がある。

 

 

 

このようにジェネリック医薬品への切り替えは、高額医療制度下では患者にとって経済的には必ずしも有利とは限らない。同等であれば、いわば服用上の未知の要素があるジェネリックより使い慣れて安定している先発医薬品を選んでも不思議ではないように思う。

医療費抑制の必要性の立場から、総論賛成だが個別にはいろいろと見解が分かれる要素が存在しているのである。

 

高額療養制度は、セーフティネットとして、患者にとって非常に大きな恩恵をもたらしているが、ジェネリック医薬品への切り替えに関しては、薬価水準の選定如何で患者への負担軽減の効果が不透明になるのである。                             (百軒)