肺炎球菌ワクチンの予防接種に関しては、2014年10月からの法的制度の変更で、65歳以上の高齢者へのワクチン定期接種が始まり、TVでの啓蒙活動などで肺炎球菌ワクチンの存在を知る方が増えてきたと思われる。肺炎球菌ワクチンそのものは、必要な基礎疾患を持つ患者や幼児への接種などで細々と医療現場で使われてきたが、経済効果の評価が固まったとして、遅まきながら高齢者への定期接種を始めたものである。
ところが、医療現場での対応が異なるのを体験した。(あくまでも個人体験・見聞)
① 定期接種の該当年齢ではないが任意接種はできますと、PPSV23を接種された。
*任意接種では、副作用などに対する国の補償制度が受けられない。
*定期接種は、5年刻みの接種対象者限定のため、最初の適応年齢を見過ごすと
受けられなくなる。(法令が2014/10~2019/3の時限立法)
*異なった肺炎球菌ワクチンの説明がなかった。
②定期接種の該当年齢ではないが、希望なら任意接種の可能性の説明があった。
*任意接種では、自治体の補助がなくて高価になる。(\3,000➡¥8,700)
*任意接種では、副作用などへの項の保証制度が受けられない。
*任意接種では、2種類の肺炎球菌ワクチンの選択が可能である。
**定期接種のワクチンは、PPSV23で5年ほどすると効果が減少する。
定期接種の再接種はできない。
**任意接種では、PPSV23の再接種が可能である
**任意接種では、PCV13のワクチンが接種できる。(¥12,000)
高価になるが、効果がより長く続く。
*特定の基礎疾患の方へは、高齢者のみならずワクチンが接種可能である。
高齢者を定期接種対象者としたのは、経済効果が主たる要因であろうが、年齢にかかわらず呼吸器疾患・心疾患・腎不全などの基礎疾患のある人への肺炎球菌ワクチンの接種の必要性がある。感染抵抗力の低下している血液疾患もその対象になる。こう考えると、肺炎球菌ワクチンの接種は、TV啓蒙情報のような接種したら安心と言う訳にはいかず、信頼のおける主治医とよく相談することが賢明であろう。
周知されている方も多いことだろうが、以下覚書としていくつかの情報を列挙しておく。
Ⅰ.現在認可されている肺炎球菌ワクチンには,効果の異なる2種類がある。
file:///C:/Users/ebani/AppData/Local/Microsoft/Windows/INetCache/IE/HNZORXCK/0000058666.pdf
① ニューモバックスNP (PPSV23)
*高齢者への定期接種が可能
*接種対象者(添付文書より)
2歳以上で肺炎球菌による重篤疾患に罹患する危険が高 い次のような個人
及び患者
1. 脾摘患者における肺炎球菌による感染症の発症予防
2. 肺炎球菌による感染症の予防
1) 鎌状赤血球疾患、あるいはその他の原因で脾機能不全である患 者
2) 心・呼吸器の慢性疾患、腎不全、肝機能障害、糖尿病、慢性髄 液漏等の
基礎疾患のある患者
3) 高齢者
4) 免疫抑制作用を有する治療が予定されている者で治療開始まで
少なくとも14日以上の余裕のある患者
② プレベナー13 (PCV13)
*定期接種は不可
*接種対象者(添付文書より)
1.高齢者(65歳以上) 肺炎球菌(血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、
14、18C、19A、 19F及び23F)による感染症の予防
2.小児(生後2ケ月~6歳未満)への定期接種
肺炎球菌(血清型1、3、4、5、6A、6B、7F、9V、14、18C、19A、
19F及び23F)による侵襲性感染症の予防
Ⅱ.日本呼吸器学会・日本感染症学会の合同委員会による『65歳以上の肺炎球菌ワクチン定期接種』の指針
https://www.jrs.or.jp/modules/information/index.php?content_id=864
接種ステップの図式を挙げておく。
簡潔化してみると、次のようなケースの選択肢が考えられる。
Ⅲ.高齢者対象の肺炎球菌ワクチンの定期接種
厚労省による定期接種のガイドがある。 file:///C:/Users/ebani/AppData/Local/Microsoft/Windows/INetCache/IE/95CQLB11/0000121144.pdf
Ⅳ.第75回日本血液学会学術集会教育講演―予防接種のガイドライン
http://www.myschedule.jp/jsh2013/detail.php?session_unique_id=EL-46&sess_id=76&strong=1
1)肺炎球菌ワクチン
a)概要
肺炎球菌は造血細胞移植後の重症感染症の起炎菌として知られており,2002年のEBMTの調査では罹患頻度は12.2/1,000で感染した場合の死亡率は20%と報告されている8)。このため予報接種が推奨されるが従来実施されていた23価ワクチン(ニューモバックス®)は国内の起炎菌の約80%をカバーしているものの感染予防効果は必ずしも十分ではなかった。その後国内では2010年に結合型7価ワクチン(プレベナー®)が発売され,より免疫効果を高めることが可能になった。このワクチン接種開始時期に関しては種々の報告があり,EBMTでは移植後3ヶ月と9ヶ月とでランダマイズ試験を行って比較した結果,同等の結果が得られた9)。また欧米では7価ワクチン接種後に23価ワクチンを接種する予防接種スケジュールもある。
b)造血細胞移植患者に対する接種
i)接種時期
移植後の重症感染症を回避する目的で移植後1年をめどに接種することが望ましいがEBMTでは移植後3~6ヶ月での接種も実施されており,本邦でも今後その実施時期につき検討すべきと考えられる。
ii)接種量および接種回数
0.5mlを1ヶ月間隔で3回,その1年後に追加接種0.5mlを1回接種。
c)過去の接種報告例
上記の他,小児の血縁および非血縁者間同種造血細胞移植53例に対して7価ワクチンを接種した結果,93%に感染防御効果が得られるレベルの抗体価上昇が認められたと報告されている10)。
Ⅴ.同種造血幹細胞移植後患者における13価肺炎球菌ワクチンの治験
(百軒)
コメントをお書きください