造血細胞移植患者手帳

 

血液腫瘍疾患の治療法の一つである「造血細胞移植」は、がん治療法の中でも過酷な治療法である。しかし、治療方法の多様性や進歩で治療対象年齢が高齢者にも及ぶようになり、治療を受けた患者数が年間5000人を超えるまでになっている。そこで、見直されているのが、幼少期治療患者の多様な晩期障害やQOLであり、また一般の移植者でのフォローアップである。
新たな動きの一つが、今年の12月1日から開始された造血細胞移植患者への「造血細胞移植患者手帳」の配布である。これに先立って、「長期フォローアップ外来」の制度が実施されているので、医療者と患者を結ぶコミュニケーションのツールともいえよう。

 

➡【参照】https://www.jshct.com/pdf/20170929.pdf

 

 

また、日本造血細胞移植学会で実施されている23のワーキンググループの一つに、 

「造血幹細胞移植における晩期死亡と死因の検討」がある。移植者の長期生存における晩期合併症とQOLの現状把握を目的としている。研究の趣旨には次の様に述べられている。

 

<造血細胞移植の実態を調査することは、わが国での造血細胞移植医療の適正な発展のために必要です。日本造血細胞移植学会では、平成6年から本邦における造血細胞移植の全国調査を実施して、移植件数と移植成績の把握を行ってきました。平成22年にこの登録データーの利用を促進する目的で、造血細胞移植学会内に23のワーキンググループ(WG)が設置され、その一つが「晩期合併症とQOL]WGです。本研究はこのWG内で企画されたものです。>

➡【参照】https://www.jshct.com/datacenter/study3.shtml

 

学会の狙いとはややニュアンスが異なるが、移植患者の視点でいえば、移植治療に伴う障害と推測される症状からくる日常生活におけるQOLをしっかりと把握してほしいと思う。

 

 

 

また、「移植後長期フォローアップと慢性GVDH」という命題での総説も、既に今年の日本造血細胞移植学会誌6(2)84-97,2017 に発表されているので参考になる。

➡【参照】https://www.jshct.com/pdf/20170929.pdf

                                       (百軒)