慢性骨髄性白血病(CML)の代表的患者会である「いずみの会」が実施した患者アンケート調査の報告集が出された。患者視点からの治療法や症状経過に関する事、生活に関わる日常活動・就労・学業・結婚出産などの事、医療費などの生活費の事、医療者との関係に関わる事などを広範にわたって調査している。
CMLの罹患者数は10万人に1人弱程度であるが、十数年前には数年を経ての致死性の高い疾患とされていたが、分子標的薬の先人として登場したグリベックにより、10年以上の生存率が90%以上となり病との共生の疾患へと激変した。しかも、日常生活の困難な生存ではない患者が大半である。問題は、治療薬服用の治療を継続しなければならない点にある。
患者の個々の背景は多様なのだが、幾つかの切り口でアンケート結果が提示されているので、読み取ることが出来る。特に今回の調査では、治療薬の選択が増えた背景をよく反映させている点で資するところが大である。この報告を見て感じるのは、一患者として病と共生していく上での自分の立ち位置が分かることである。そこから、治療や生き方のより良き選択を自分なりに見いだせるだろう。
患者の動態からいくつか挙げてみると、
*患者歴:10年以上(38%)8~10年(17%)5~8年(20%)・・・で長期化が増えている。
(治療ガイダンスで完治(=治療終了)を認めていないので、病歴が長くなる)
*治療法選択:グリベック(29%)タシグナ(21%)スプリセル(27%)ボシュリフ(6%)と
服用薬の選択が、症状・副作用・目的により多様な選択となって来ている。
なお、服用休止(6%)とあるが、臨床試験参加者とみられる。2018年度の治療ガイダン
スでは、難治性・強度の副作用・妊孕などの事例以外は認めていない。
造血幹細胞移植は1%になっている。
*治療経過(効果):MR4.5が当面の治療目標だが、治療効果が大きいのが読み取れる。
CHR ・・・ 9% 血液学的完全寛解―(検査)血液所見ほぼ正常
CCYR ・・・ 3% 細胞遺伝学的完全完解ー(検査)細胞レベル 0%
MMR ・・・12% 分子遺伝学的大奏功ー(検査)遺伝子レベル 0.1%以下
MR4.0 ・・12% 分子遺伝学的完全寛解―(検査)遺伝子rベル 0.01%以下
MR4.5 ・・21% 分子遺伝学的完全寛解―(検査)遺伝子レベル)0.0032%以下
CMR・・・16% 分子遺伝学的完全奏功ー(検査)遺伝子レベルMR4.0同等
*治療の副作用:治療薬(TKI)の添付文書にみる副作用(有害事象)とは、患者視点からの
感じ方ゆえに乖離がある。(添付文書と比較してみると面白い)
治療薬のによる差異がある。多いものを挙げると、
こむら返り(32%)
倦怠感(27%)
白髪(23%)
浮腫(23%)
皮膚が白くなる(18%)
筋肉痛(16%)
発疹(16%)
下痢(14%)
貧血(13%)
皮膚が薄くなる(12%)
添付文書2017年7月改訂に出てきた重篤な腎障害(5%未満)は、以前は医療者と
コミュニケーションで問題ないと言われてきた個人的経験があるが、今回のアンケート
も腎機能低下(9%)と出てきている。製薬メーカーでは情報をもっと早くから入手してい
たのではないだろうかなどと思いが走る。
*治療頻度:
通院頻度・・・3ケ月毎(47%)2ケ月毎(19%)一ケ月毎(16%)
その他、生活上や治療費などへのコメントも多くみられる。
(文責:三鍋康彦)
注:「いずみの会」問い合わせ先
izumi_cml@yahoo.co.jp
「いずみの会」のご了承を得て、一例のコピーを掲載しておく。
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