造血幹細胞移植患者を主体とした患者会に動き

 

造血幹細胞移植、取り分け同種移植を受けた経験者には、治療の過酷さ以上にドナーからのいのちを頂いたという熱い気持ちがある。

 

造血幹細胞移植件数が年間5000件有余(自家移植1800件、同種移植3500件)となり、移植患者への移植前後での説明に当たる造血細胞移植コーディネーターの充足も進みだし、移植後の晩期障害などを始め様々な患者の医療上の状況の掌握にフォローアップ外来などが設けられるようになってきた。臓器移植法に規定される移植とは概念を異にするが、他の臓器移植件数が年間350件前後に終始しているのに比して、圧倒的な移植件数である。

 

移植医療技術の進歩と豊富な情報に囲まれてきているが、患者にとっては造血幹細胞という掴みどころのない相手と命を懸けた治療のイメージからの脱却は至難である。医療者とのインフォームドコンセントと共に同病の患者仲間からの情報が熱望される所以である

 

造血幹細胞移植は、白血病・骨髄異形成症候群・悪性リンパ腫・多発性骨髄腫・再生不良性貧血などで他の治療法では治癒が望み難い場合の治療法として選択されている。このため、100ほどの活動されている血液疾患患者会(血液腫瘍患者の患者会一覧参照)のいずれでも、参加者を見掛けることが多い。そして、非移植患者が疎外感を感じるほどに熱の籠った情報の交流をされる姿もまれではない。しかし、移植の特異性への理解や治療経過や晩期障害などで、この治療法に特化した患者同士の交流会が古くから数少ないが行われてきている。偶々、新たな造血幹細胞移植患者の患者会として、「つつじの会」2015年、「心愛の会」2017年・「有希」2019などが見られたので、少しチェックしてみた。

 

 

以下に、めについた造血幹細胞移植患者を中心とした患者会を、地理上の北から羅列してみる。

                                                                                                                    (百軒)

1.雪うさぎ10西の会(福島県立医科大学附属病院) 

 

血液内科の病棟から生まれた患者会で院内患者会

であるが、長年にわたり幅広く活動されており、

公開性を採っている点でもより多くの患者への

貢献を志されているとみられる。

 

 

.駒込病院血液内科患者と家族の会「つつじの会」(東京都立駒込病院)

つつじの会(駒込病院血液内科患者と家族の会)は20159月に開催された造血幹細胞移植同窓会のアンケートにより、一番ご希望の多かった「つつじの会」を会の名前とし始動いたしました。

とある様に、造血幹細胞移植患者の色彩の濃い

患者会と思われる。院内患者会であるが公開制で内外の患者や家族を参加が可能であり、独自のホームページがあり活動状況がよくわかる。

 

3.12Bnet(国立がん研究センター中央病院)

12Bネット」は国立がん研究センター中央病院(東京都中央区築地)で、造血幹細胞移植を受けた患者の会です。設立は19973月。当時の国立がんセンター中央病院にて患者5人が発起人となり、「同じような経験をした方々と

親睦を深め、何でも話し合える場を作ろう」と作った患者会「8A(旧病棟名)ネット」が前身です。 メンバーは同院にて治療を受けた方。特に役員を決めておらず、会費もない、ユルい会です

 

とされていて、サロンに参加するのは移植治療を体験した12Bネットメンバー、ご家族、医療スタッフで、各月ごとに開催されています。

 

4.9S会(慶應義塾大学病院)

造血幹細胞移植の医療技術がまだまだ至難の時期に、看護師と患者との熱い熱意から病棟より生まれたもっとも古い患者会である。活動が院内に限られているため、ネット上への情報発信はあまりない。

 同じ拠点で、「ほっとの会」がある。患者を支える家族への支援を志したものである。患者以上に、家族への支えの必要性に応えた活動である。

 

 

5.虎ノ門13会(造血幹細胞移植患者の会) (虎の門病院)

    虎の門病院は、患者会やがんサロンなどの情報は、一切外部発信はしないので、

    がん情報サービスから採取した。

 

6.パロスー東大病院血液疾患患者・家族のおしゃべり会(東大病院)

必ずしも移植患者とは限らず、血液疾患の患者やその家族が参加しているが、世話役も含めて移植経験者が多い。医療者の参加などもあり、広く公開制をとっている。

 

7.白金会(東京医科学研究所附属病院)

 

年一回ほどの医療者・患者家族の交流会(大半が移植患者関連である)で、同窓会的な雰囲気を持つ。 外部情報は出されていない。

 

8.日本大学医学部附属板橋病院造血幹細胞移植患者会

       院外への情報はほとんど見られない。

 

9.造血幹細胞移植患者会"勇希(横浜市立大学附属市民総合医療センター病院)

 

2019.3.26第一回開催 

発足して間のない患者会であり、案内チラシが病院のホームページに掲載されていたが、終了後のリンク切れのため掲載できなかった

 

 

 

 

 

 

2019.7.3第2回開催 案内

 

*お知らせ欄に掲載されるので、経過すれば削除されます。

 

10.血液疾患患者会「心愛の会」(横浜市立大学医学部附属病院)

  2017年に発足し、年間数回開催されている。

 

11.骨髄移植体験者の会TOMORROW(東海大学医学部附属病院)

造血細胞移植コーディネーター(HCTC)の常時参加があり、公開制をとっている古くからの患者会である。

 

12.たんぽぽの会(長野赤十字病院)

 

 

 

病院のホームぺジには患者会のコーナーがある。

 

13.造血幹細胞移植患者同窓会―ひまわり(名古屋第一赤十字病院)

 

造血幹細胞移植における本邦のパイオニアであり、造血幹細胞移植推進拠点病院でもある当院での患者会活動は、過去の事例にみられるが、現状は詳らかではない。

 

 

14.むくのき(島根県立中央病院)

 

病院のホームページなどからの情報発信は見られないが、関係者のブログに

活動状況の短編が記載されている。

 

 

15.岡山造血細胞移植患者会「きぼう」(岡山大学医学部附属病院)

 

病院の患者会登録にまだ残されているが、10年に及ぶ熱の籠った患者会の活動の終焉が告げられている。造血幹細胞移植推進拠点病院であるだけに、惜しまれることである。

 

16. 造血幹細胞移植体験者・家族会「ななの友」愛媛県立中央病院

     病院のホームページなどには、情報は開示されていないが、古くからの活動として

     がん情報に掲載されてきている

 

造血幹細胞移植の予定者や体験者にとって大きな拠り所の一方は、

日本骨髄バンク

全国骨髄バンク推進連絡協議会

であり、

 

最近、ローカルでの骨髄移植患者への支援活動を発足させている事例がある

 

他方では、

日本造血細胞移植学会

造血幹細胞移植推進拠点病院事業

   

があるり、中核的な活動のための造血幹細胞移植推進拠点病院が国により指定されている。

 

現在下記の病院が指定されているが、東海大学医学部附属病院のみが患者会について触れている程度で、患者の交流は制度上のメジャーな目標にはなっていない。

 

これらの拠点病院での医療者への研修制度が活発に実施されている中で、最近九州大学病院での事例で、患者寄りの講演会の開催案内が目を惹いた。同種移植を受けた患者で、血液腫瘍の患者・二重のがんを背負う患者・医師で移植経験患者による講演と討議のイベントで、学会などでの市民公開講座などでもみられるが、より身近でのこのような機会のあることは嬉しいことである。