格安ジェネリックが名無しの権兵衛になる仕組み

疾患の病因解明の進歩に伴う的確な標的への創薬活動が活発となり、患者への多大な幸運を齎してきている。ただし、創薬投資の膨大さと特化市場の狭さから非常に高額な薬価の新薬が増えてきた。医療行政上の財政抑制の視点から、これら新薬の特許切れなどの機会に安価な薬価で提供すべく『ジェネリック』が推奨されている。

一患者の視点からこれらの情報を得るのに何よりも信頼するのが、ほかでもない厚労省からの公文書『薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報』である。ところが、思わぬ落とし穴に出くわした。非常に安価な薬価申請が承認されたのにもかかわらず、この情報源には見当たらないのである。

 

私事であるが、CML治療薬のグリベック(先発品)を長年服用してきたが、格安なジェネリックを提供しだしたメーカーのあることを知り、主治医(血液内科医でもなくクリニックの院長である)に相談すべく該当ジェネリック商品の情報を厚労省の最も信頼できる『薬価基準収載品目リスト』に求めたが、全く見当たらないのである。その状況を冒頭の図表にしました。掛かりつけ保険薬局の薬剤師に伺っても、その理由は不明であった。思い余って、FACEBOOKに投稿したら、思いがけなくもK教授から的確な情報を頂いた。まとめてみると、行政の定める明確な規定として次の様になっている。

  < ぼけっと生きているんじゃないよ! >   といわれそうである。

 

医療用医薬品は、その役割の重要性から国家が定める『コード』を付すことが定められており、日本ジェネリック製薬協会のホームページにもその解説が掲載されている。

    https://www.jga.gr.jp/jgapedia/column/_19335.html

 

①日本標準商品分類番号

(総務省作成、市場商品掌握目的の番号、医薬品では添付文書に記載の番号)

②薬価基準収載医薬品コード➡これが患者の視点から重要

 (厚労省作成、官報告示、銘柄別に規格・単位ごとに番号を付ける)
➂YJコード➡②の十把一絡げ処理の補完目的

 (個別医薬品コードともよばれ、②で十把一絡げとした医薬品群を、医薬品の個々の

識別を可能としたもの)

④レセプト電算処理システム用コード

保険診療に用いられる医療用医薬品は、全て官報に告示され厚労省の薬価基準に収載される【②】。ここはで、薬価基準に収載される医薬品は二種類に大別され、「銘柄別収載方式」と「統一名収載方式」に振り分けられるように定められている。殆どの医薬商品は「銘柄別収載方式」により掲載されているが、「統一名収載方式」に分類される医薬商品として、日本薬局方収載医薬品(局方品)・生物学的製剤基準収載医薬品の一部(ワクチン・血液製剤など)、生薬の一部、および一般名収載品目が規定されている。

ジェネリック行政の観点から非常に関心のもたれるのが、この『一般名収載品目』の規定である。その定義は、次様に記されている。

 

このうちの「一般名収載品目」とは、銘柄間の価格差が著しい品目において、低価格※1に属する医薬品をいいます。※120169月現在では、組成、剤形区分および規格が同一である品目のうち、最高薬価の30%を下回るものが該当します。

 

これでは、医療費低減のためにジェネリック推進に血眼の厚労省の方針と真っ向から反する厚労省自ら定めた規定が厳然として履行されていることになる。今世紀になって、画期的な医薬品の創薬が続き医療の進歩に大きな貢献をしているが、其の多くが非常に高額な薬価となっている。これらの先発品に対して、特許切れ等を転機としてのジェネリックによる安価な薬価出現を厚労省が推進しているが、同一規格医薬品で先発品などの最高価格の30%以下の価格を申請した医薬品は、『薬価基準収載』には、固有商品名もメーカー名も削除された「名無しの権兵衛」として掲載されるのである。冒頭に示したグリベック―イマチニブの事例がそれに該当する。

 

ジェネリック推進におけるこのような落とし穴は、早急に解消されることを切望したい。

                                  (百軒