電話オンライン診療の其の後~普及・活用率低い

厚労省が0410」事務連絡として、病院・診療所の感染対処に伴う診療負荷軽減のために打ち出した新型コロナウイルス感染防止対策の『電話・オンライン診療の暫定的な措置』は、7月には効果の検討を行うとされていた。その第10回検討会が去る86日に行われた。その資料からいくつかを取り上げてみた。
この時限・特例的措置は、その期限を「感染が終息するまでの間」としているが、厚労省の表現によると、「院内感染のリスクが低減され、患者が安心して医療機関を受診できる頃」であり、現状ではまだほど遠く当面継続されることになった。次回検討会は11月とされている。

 

110,000ほどの医療施設で、電話診療・オンライン診療を行っているのは14.6%であり、初診でも取り扱いとするところは6.1%にとどまっている。医療負荷低減と感染防止を狙った緊急措置にしては、患者視点から見れば利用できる医療機関を見出すのに苦労するような低い普及度に留まっている。制度として、医療機関に選択権があって、患者にはないともいえる現状である。

 

 

本ホームページ(HosPSAC)を見て頂いている方々の多くは、血液疾患やその他のがん患者である。患者の視点からいえば、通院による感染への不安解消にはありがたい制度である。

関東地区1都6県のがん診療連携拠点病院で、『0410』事務連絡制度の実施状況を病院のホームページから調べてみたら、102病院中45の病院で実施されている。実施率からいえば全国の医療機関での14.6%より高く、44%である。しかし、医療者の対面診療への信念からか初診は皆無、かつ通院患者でもすでに診療予約のある患者に限られていて、対象患者はかなり限られることになる。しかも、緊急事態宣言解除を契機に、この制度を終了乃至は中止しだしたところが増えてきている。


具体的に、各拠点病院での実施の有無がわかる様にリンク表一覧を示しておく。

 

関東地区がん診療連携拠点病院の『電話オンラインによる診療』実施の有無

 

電話や情報通信機器を用いた診療や処方箋発行の実施状況

(新型コロナウイルス対策)

                         HosPAC調査  2020/4/1 

                                 2020/4/8 更新

                                 2020/4/17更新

                                 2020/4/22更新

                                 2020/4/30更新

                                 2020/5/20更新

                                 2020/6/25更新
                    2020/8/8  更新

医療機関

案内有無

ホームページでの案内内容

可否

東京都

 

 

 

東京都立駒込病院

 ◎

電話再診での処方箋発

再診患者

有明病院

 ◎

医師からの電話による受診や検査の延期、処方箋発行

再診患者

聖路加国際病院

 ●

 

 

国立がん研究センター中央病院

 ●

電話診療による院外処方箋発行終了のお知らせ

6/30にて

終了

虎の門病院

眼科のみ

眼科:電話での処方箋発行

再診患者

東京慈恵会医科大学附属病院

 ◎

電話での処方箋発行

再診患者

慶應義塾大学病院

 ◎

電話診療による処方箋発行

再診患者

東京医科大学病院

 ●

 

 

国立国際医研究センター病院

 ●

電話診療の終了について6月)

終了

東京大学医学部附属病院

 ●

 

 

日本医科大学付属病院

 ●

 

 

順天堂医院

 ●

電話診療による定期処方箋発行➡消失

案内消失

東京医科歯科大学医学部附属病院

 ◎

電話での処方箋発行自宅郵送

再診患者

東京都立墨東病院

 ●

 

 

NTT東日本関東病院

 ◎

電話再診による処方箋交付

再診患者

昭和大学病院

 ◎

電話での処方箋発行自宅郵送

再診患者

東京医療センター

 ●

 

 

東邦大学医療センター大森病院

 ◎

処方でお困りの方へ

再診患者

日本赤十字社医療センター

 ●

電話での処方せん発行消失

案内消失

東京女子医科大学東医療センター

 ◎

新型コロナ対策のための電話診療による、処方箋の発行・送付自宅郵送

再診患者

東京女子医科大学病院

 ●

 

 

日本大学医学部附属板橋病院

 ●

 

 

帝京大学医学部附属病院

 ◎

新型コロナウイルス感染症対策のための臨時的処方8/8更新

定期受診

東京医科大学八王子医療センター

 ●

薬の処方について電話受付不可

 

災害医療センター

 ●

 

 

武蔵野赤十字病院

 ●

 

 

杏林大学医学部付属病院

 〇

眼科のみOK自宅郵送

 

青梅市立総合病院

 ●

電話による再診処方発行中止

7/7付中止

多摩総合医療センター

 ◎

電話診療による処方箋発行

再診患者

公立昭和病院

 ●

 

 

    

 

 

 

【神奈川県】

 

 

 

神奈川県立がんセンター

 ●

 

 

横浜市東部病院

 ●

 

 

横浜市立みなと赤十字病院

 ●

 

 

横浜市立市民病院

 ●

 

 

横浜市立大学附属病院

 ◎

電話診療による処方箋発行

再診患者

横浜労災病院 

 ●

 

 

昭和大学横浜市北部病院

 ●

メールによる処方箋発行➡終了

終了

川崎市立井田病院

 ◎

話診療による院外処方箋発行

再診患者

関東労災病院

 ◎

電話診療による処方箋発行

再診患者

聖マリアンナ医科大学病院

 ○

一部対応可能

 

相模原協同病院

 ●

電話再診による処方箋発行➡消失

案内消失

北里大学病院

 ●

電話診療による処方箋発行

案内消失

横須賀共済病院

 ◎

電話再診による処方箋発行

再診患者

横須賀市立市民病院

 ◎

電話診療による処方箋発行

再診患者

藤沢市民病院

 ●

 

 

小田原市立病院

 ◎

電話再診による処方箋交付

再診患者

大和市立病院

 ◎

電話再診による処方箋FAX

再診患者

東海大学医学部付属病院

 ●

 

 

    【千葉県】

 

 

 

千葉県がんセンター

 ●

電話再診による処方箋発行

案内消失

千葉医療センター

 ●

 

 

千葉大学医学部附属病院

 ◎

電話察による処方箋発行

再診患者

東京歯科大学市川総合病院

 ●

 

 

船橋市立医療センター

 ●

 

 

君津中央病院

 ●

 

 

松戸市立総合医療センター

 ◎

電話診療による処方箋発行

再診患者

国保旭央病院

 ◎

新型コロナウイルス感染拡大防止に伴う電話による再診

再診患者

東京慈恵会医科大学附属柏病院

 ◎

電話再診による処方箋発行

再診患者

国立がん研究センター東病院

 ●

 

 

千葉労災病院

 ●

 

 

亀田総合病院

 ●

電話による再診・処方箋発行消失

案内消失

順天堂大学医学部附属浦安病院

 ◎

電話再診による定期処方箋発行

再診患者

日本医科大学千葉北総病院

 ●

 

 

さんむ医療センター

 ●

 

 

    【埼玉県】

 

 

 

埼玉県立がんセンター

 ●

 

 

自治医科大学附属さいたま医療センタ

 ●

 

 

さいたま赤十字病院

 ◎

電話再診についてのご案内

再診患者

さいたま市立病院

 ●

 

 

埼玉医科大学総合医療センター

 ◎

オンライン診療:内分泌科

再診患者

川口市立医療センター

 ●

 

 

済生会川口総合病院

 ●

 

 

春日部市立医療センター

 ◎

慢性疾患患者の電話での診療・投薬

再診患者

深谷赤十字病院

 ●

電話による処方箋消失

案内消失

獨協医科大学埼玉医療センター

 ◎

電話診療による処方箋発行

再診患者

戸田中央総合病院

 ●

 

 

埼玉病院

 ●

 

 

埼玉医科大学国際医療センター

 ◎

電話診療による処方箋交付

再診患者

    【群馬県】

 

 

 

前橋赤十字病院

 ◎

電話による診療の処方箋受付

再診患者

高崎総合医療センター

 ◎

電話再診による処方箋の発行

再診患者

桐生厚生総合病院

 ◎

電話でのお薬処方

再診患者

伊勢崎市民病院

 ◎

電話診療による処方箋発行

再診患者

群馬県立がんセンター

 ●

 

 

渋川医療センター

 ◎

電話再診による処方箋交付

再診患者

公立藤岡総合病院

 ●

 

 

公立富岡総合病院

 ●

 

 

群馬大学医学部附属病院

 ◎

電話による診療の処方箋受付

再診患者

    【栃木県】

 

 

 

栃木県立がんセンター

 ●

 

 

済生会宇都宮病院

 ◎

電話診療による処方箋発行

再診患者

上都賀総合病院

 ●

 

 

芳賀赤十字病院

 ●

 

 

那須赤十字病院

 ●

 

 

自治医科大学附属病院

 ◎

電話診療による院外処方箋発

再診患者

獨協医科大学病院

 ◎

電話診療による投薬

再診患者

    【茨城県】

 

 

 

茨城県立中央病院

 ●

電話再診のお知らせ消失

案内消失

日立総合病院

 ◎

感染症対策に伴う電話処方

再診患者

土浦協同病院

 ◎

電話再診による処方箋発行

再診患者

友愛記念病院

 ◎

電話再診による処方箋発行

再診患者

筑波メディカルセンター病院

 ●

 

 

筑波大学附属病院

 ◎

電話再診申し込みフォーム

再診患者

日立製作所 ひたちなか総合病院

 ●

電話による診察で処方箋➡消失

案内消失

小山記念病院

 ●

 

 

水戸医療センター

 ●

 

 

東京医科大学茨城医療センター

 ●

 

 

 

◎実施   〇 準備中・検討中・可否の見解   ● 情報なし(=未実施)

 

 

 

 

以下、厚労省の「10回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(8月6日)に提出された資料2「令和2年4月~6月の電話診療・オンライン診療の実績の検証についてから、いくつかのデーターを挙げておく。

 

 

人口10万人当たりの都道府県別の医療機関数が掲載されている。都道府県間での際も大きいが、根本的にはこの制度自体の普及率の低さが問題なのではなかろうか。

 

 

今回の「0410」通達として出された電話オンライン診療と本来のオンライン診療とが混在して理解されている可能性がある。本来のオンライン診療は初診は取り扱わないが、今回特例として取り扱い可能とされたので、上掲の様に初診取り扱いが出てきている。

 

 

利用している診療科を見ると、電話診療(0414事務連絡臨時処置)ではないかが過半数を占め、後小児科、皮膚科と続く。一方、施設的な背景の備わっているはずのオンライン診療では、

 

内科と小児科がそれそれ1/3を占め皮膚科が続いている。こうしゃは、従来からの信頼を寄せている患者が多いのではないだろうか。

 

 

 

利用した患者の立場からのデーターを見てみよう。

厚労省当局や専門家の中では、「0410事務連絡」ははっきりと電話診療の概念で理解されていて、明確な法令に基ずくオンライン診療とはデーター処理上でも峻別しているのがわかる。

オンライン診療が小児世代とワーキング世代が利用者の中心であるのにたいして、電話診療では、各世代満遍なく利用している。

 

 

 

患者の年代別での発症疾患のデーターである。小児に特有の現象が見られよう。

 

                                 

                                       (百軒)