NPO血液情報広場つばさ よりのお知らせ

 

上掲図は、以下の「NPO血液情報広場つばさ」が出されたお知らせの一部分を象徴的に示したものである。高額な医薬品の激増する中でその皮切ともなったグリベックのジェネリック品に対する情報公開の不公平性を示している。ジェネリックへの転換へと推進の旗振りをしている厚労省の中で、ジェネリック品の内低価格品の情報が付せられているのである。この点を問題提起されたのが、如何に引用したつばさのお知らせである。この問題は、一医薬品に留まらない厚労省行政の中での情報の公平な公開に関わることなのである。

つばさからのお知らせ

 

 

分子標的薬のジェネリックの社名無記載について
「厚生労働省・薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(826日版)」

Newsletterひろば2008号24ページで「厚生労働省・薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報に、分子標的薬のジェネリックではもっとも廉価な薬だけ、メーカー名が記載されていない」についてお伝えしました。

この件につきまして、91日、つばさより厚生労働大臣、厚生労働省医政局長あてに、以下の手紙をお送りしましたところ、すぐにお電話をいただきました。ご担当者さんとの会話は、手紙のあとにまとめました。

薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報について(令和2826日)におきまして、薬価基準医薬品コード4291011F1010はメーカー名が記載されておりません。

現在のメーカー名無記載の理由をお知らせください。
服用する患者が自身にもっとも合った薬を選ぶために、メーカー名の記載をお願いします。

以下に、お願いに至る経緯と理由を述べさせていただきます。

本状には、つばさがかかる質問とお願いを提出するに至った過程を述べ、また関連記事を過去2Newsletterひろば171228ページ、同191236ページに掲載しました。手紙のPDF

<厚生労働省からの連絡(電話)と会話>
手紙に対しましては、92日に医政局経済課より1度目のお電話をいただきましたが、従来の「薬品コードとイマチニブ(一般名)収載」を繰り返すだけで、つばさが送った「当事者は薬局などで要望を伝えるために、全社名記載が必要である、掲載してほしい」というお願いには、「内部で検討して、明日答える」とのことでした。しかしこの電話では、私たちの(全社名を知りたい)要望は、保険局が適当でしょうから廻します、とのことで電話が廻されました。しかし保険局の事務官は私共が出した手紙も読んでおらず、「簡単に説明を受けたので、かいつまんで答えます」とのことでしたので、「先ずは手紙とNewsletterひろばにお目通しいただいて、それからご説明ください」として、いったん電話を終わっております。[ここまで、92]

3日 保険局よりお電話をいただきました。以下に、保険局行政官を「」、橋本を「」としてかいつまんでお伝えします。

:お手紙と添付資料を医政局経済課より受け取り、読ませていただきました。疑問とご要望については理解したと思っております。まず、「薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報」では、最高額の30%以下の統一名収載品として扱うのでメーカー名は入らないことになっています(と、医政局経済課と同じ説明でした)。
このメーカーだけを除外しているように捉えられているとしたら、それはこの範囲に入る金額のジェネリックが1社からしか出ていない現状だからです。厚労省としてはジェネリックの使用が増えることを歓迎しております。ほかの多くの疾患で、ここに入る薬が複数あるジェネリックもあります。その場合はどの会社も掲載されておりません。
また、この一覧は患者さん向けではなく、処方する医師や薬局のような専門家向けです。本来なら薬の一覧や値段などは保険薬辞典などが向いているものです。

:それは理解しました。しかし1つご記憶いただきたいのは、これががん治療薬であること、そしてジェネリックとしてはこれまでにない「試験管や動物モデルでの効果や副作用の検証判定を経ていること」(Newsletterひろば1712号28ページ)です。
そのようなことから、このメーカーの薬を確認したくて一覧を見た三鍋さんのような当事者が、メーカー名が無いことに不安になるのは無理からぬことです。ここに社名を全て記載すれば良い事ですから、改善を求めたいと思いお手紙を差し上げた次第です。これは専門家向けだから、ということなら、当事者はどこをみれば自分により合っていると思う値段(そのメーカー)のジェネリックを確認すればよいのでしょう?保険薬辞典を見るなど、医療の素人である患者にはほぼ無理です。一方、SNSで知識を得ようとするのが一般的なこの時代ですから、この一覧にたどり着くのは(その気があれば)自然です。

:この度お手紙をいただいて、その観点を初めて勉強させていただきました。この一覧の改善は2年に1度で、最近完了したばかりです。次に改善しますという約束はできませんが、担当者の一人として認識し、記憶に留めておくことはお約束します。

:ありがとうございます。ともかくこれは、血液がんだけではなくがん治療全体を大きく変えた分子標的薬という素晴らしい薬があったればこそ、ということも覚えておいてください。同時にそれが非常に高く、しかも長期に(人によっては生涯)飲み続けなくてはならない、という「診断と同時に、医療・経済弱者になってしまう人」がたくさん派生した問題でもあります。その流れの中で、先行薬の特許が切れたのちに、大原薬品工業が「ジェネリックへの不安を解消しつつ、ぎりぎりまで安い値段設定にして発売した」という事実を知ったときには、良い意味で本当に驚きました。それで私たちは、この薬のことを可能な限り知らせようと、木村先生にご寄稿いただいたり、また大原薬品工業にお願いしてNewsletterに広報を掲載してもらったり、三鍋さんは「オーハラのイマチニブを使用している当事者として」発信を続けたりしております。

:ご要望とそれに至る経緯を、よく理解できたと思っております。「薬価基準収載品目リスト及び後発医薬品に関する情報」は保険局が作成しております。ですので、最初にお手紙をいただいた医政局からこちらに廻されたのは自然なことです。ただ、もし患者さんへの値段も含めた薬の情報を発信するとしたら、それは医政局です。お聴きしたご要望は2局にかかるテーマになりますので、ひとまず本日のお話は医政局へも伝えておきます。

:質問にお答いただきましたこと、本当にありがとうございます。全社名がリストアップされるよう改善をお願いすることは、私達にとっての継続課題でもあります。今後も要望を発信しつづけますので、宜しくお願いします。[以上、93]

[情報掲載日:2020/09/03]
◆その後の経過を追記しました [2020/09/04]